クッション、ブランケット、リード、首輪、犬服、おもちゃ、食器、サプリメント、薬、お散歩バック、、、見ると悲しいので捨てた。思い出がある物は衣裳ケースにしまった。多分もう開ける事はないだろうと思ったけれど、、、衣裳ケース4つでも入り切らなかった。
買い置きしてあった未使用の物は、お線香をあげにきて下さるお友達に差し上げた。
外に出ると「あら、ワンちゃんは?」と聞かれるのがイヤで、自転車を買った。誰にも話しかけられないようにスーッと通り過ぎたかった。
スポーツジムに入会して毎日プールで泳いだ。泣き出しても気付かれないし、デュークとの思い出が何もない場所で時間をつぶせる。
スカイツリーに上った。暗くなるまで空を見ていたけれどデュークらしき星は見つからなかった。
夫婦で沖縄旅行をした。車で出かけると何を見てもデュークを思い出すから、飛行機でどこでもいいから行こうと思った。
学生時代の友人と伊勢神宮に行った。
今まで出来なかった文化的な暮らしを目指して、美術館で絵画展を見た。文化会館でハープの演奏を聴いた。歌舞伎役者さんの日舞を見に行った。
実家の家族旅行に便乗してハワイ旅行をした。
家にひとりでいるのは苦しかった。冷蔵庫の中を見ても泣けてくるから、外出ばかりしていた。
何をしても、何もしなくても、つまらなかった。
3ヶ月経ってもこんな状態だったらお医者さんで薬を貰うといいよと言われた。我慢しなくていいんだよ、と。
デュークの四十九日が過ぎ、久しぶりにFacebookを開いたら「サルーキの子が産まれます」といきなり目に飛び込んできた。以前からパーティカラーの子をお願いしていたブリーダーさんだ。デュークがいる時から決めてあった話だけど、、、どうする?もう、犬は飼わないと決めていた。パートナーはデュークだけだ。デューク以上の関係は築けないに決まってる。でも、、、少し気持ちが動いた。
何となく好奇心で交配の日を聞いてみた。デュークが亡くなる2日前だった。
「シャンピーの子も2日後くらいに生まれるよ」と言われた。交配の日はデュークが亡くなった日!!
シャンピーはデュークがドッグショーに出ていた時から知っている、数々のタイトルを獲った華々しい経歴の犬だ。きっと素晴らしいクリームの子が生まれるのだろうと思った。我が家に縁はないね。
数日後、産まれた仔犬の写真を見て目を疑った。衝撃が走った。
パーティの仔犬がいる!!
デュークが亡くなった日の交配でパーティの仔犬が生まれた!
デュークの生まれ変わりに違いないと思った。私達が間違えないように、分かりやすくパーティカラーで生まれ変わったんだ。デュークだ!
突然すべての感情が吹っ飛んだ感じだった。この子がいれば他には何もいらないと思えるほど、この子の事で頭がいっぱいになった。
これでこの子にがウチの子にならなかったら、デュークを二度失くすみたいで絶対に立ち直れない。この子の成長を遠くから見るだけでもいいと思わなくちゃ、と自分を諌めた。
「この子、デュークの生まれ変わりだと思う」と言ったけど「この子が欲しい」とは一度も言わなかった。デュークなら放っておいてもウチに来るはずだという根拠のない確信があった。
運命の子は、いろんな方々の暖かい気持ちを頂いて我が家に来ることになった。
「正式に決まったよ!」と連絡を頂いたのはこの子が誕生して6日目のことだった。